列車でゆく綺世界探訪

その窓から見える風は綺世界の色

マジックツーリズムの嗜み

子供心に自転車に跨がればどこまでも行けると思った。

いつしか、それよりも遙かに遠くへ連れて行ってくれる存在を知った。

 

地を這う竜

その竜は化石燃料や電気を喰らう対価としてヒトを運ぶ。ガタゴトと鳴きながら線路に沿って長い身体を這わせ、驛舎という停留所で待つヒトビトを飲み込んでは放流する。雨の日も風の日も、早朝から深夜まで堂々たる唸りをあげて各々の縄張りを行き来する。

Draco Prostratus(ドラコ・プロストラータス / 地を這う竜)

各地に生息する竜を乗り継ぐことで、ヒトも遠くへ行ける。

その道が続く限り。

Draco Prostratusとの健全な付き合い方

近づく予兆があれば竜の通り道に立ち入ってはいけない。竜が完全に停止し腹を開くまで待つのが礼儀だ。プラットホームのイエローラインは竜と友好的に向き合う節度の証。

竜は急には止まれない。邪魔をすれば彼岸への道が開かれる。

それは竜とて良い気はしないだろう。

 

竜とゆく綺世界

生活圏の車窓、ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車。

いつもと同じ竜でも、遠くへ行くつもりで乗り込めば目に映る世界が変わる。竜のネットワークがさらに遠くへと、悠久の旅へ誘ってくれる。

遠くに見える風力発電の羽とその袂に伸びる線路

各地にどんな竜が生息しているのか、その先に何が待っているのか。

本当の意味でそれを知ることができるのは、その風を浴びる者だけだ。

 

旅の効能

非日常に浸って自分を解放することで、日常に充足やメリハリをもたらす。旅にはそんな効能がある。誰かにとっては平凡な日常のワンシーンでも、今まで視ようとはしていなかった光景は奇妙に思えることもある。

「現実にはこんなことは起こらない」という想像の枠を壊し、予想できない展開を物語る。それは旅に期待することでもある。

ならいっそのこと、思いっきり違った世界に飛び込んでみたら面白いのではないか。

Magic Realism(魔術的リアリズム

非現実的な出来事や現象を "ありきたりの風景" として描写する手法。

元はラテンアメリカに起源を持つ美術技法であり、のちに文学の世界でも発展した。

規則にとらわれず自由な発想を育む風土が生み出した表現技法は、豊かな物語性や幻想性を織りなす "非現実的な日常" を描くことを可能にする。

動物が話したり、死して星になったりしても、誰もツッコミを入れたりせず当たり前のこととして着々と話が進む神話に似ていると言えばわかりやすいだろうか。

一方で、不思議な世界を "奇妙なもの" として楽しむ奇譚やファンタジーとは一線を画すものである。

Magic Tourism(綺世界探訪)

旅先は貴方の知るこの世界のどこか。Magic Realism(非現実的な表現)とStory of Tourism (旅の逸話)を組み合わせた旅の軌跡。

現実の光景を "あえて非現実的に" 捉えてみる "綺世界探訪 Magic Tourism" へようこそ。